●ＢＵＲＢＯＮ、その名前の由来
　バーボンという名前は、その酒がケンタッキー州バーボン・カウンティで造られたからである。逆にいえばバーボン郡で造られたウィスキーしかバーボン・ウィスキーという名前を名乗れないのである。
バーボン･カウンティは、独立戦争の時にアメリカを援助してくれた、フランス国王ルイ１４世にちなんでつけられた。
　ところが現在このバーボン・カウンティの中には、一軒のバーボン･ディスティラリーもない。それは、このバーボン･カウンティが分割され、縮小されたバーボン郡の中にはディスティラリーが一軒も入らなかったからなのだという。

●ケンタッキー･バーボンの条件
　原材料に使われるのは、トウモロコシ／ライ麦／麦芽処理をした大麦（いわゆるバーレイ・モルト）の３種類であり、基本的にはこの３種類の穀類の微妙な配合による。
配合の中ではっきりと決められているのはコーンの含有量で、少なくとも原料の５１％以上がトウモロコシでなければならない。
また、バーボン･ウィスキーは１６０プルーフ（８０度）以上には蒸留しない。蒸留を重ねて度数を上げることは簡単だが、その結果、世に送り出すときには薄めなければならないことになり、それを避けているのである。
さらに、バーボン･ウィスキーは、最低２年以上の熟成期間持たなければならない。
　しかし、それ以前にバーボン･ウィスキーの最も特徴的なことは、内部を焦がした新品の樽で寝かせるということである。樽の材質は、かつてアメリカ開拓に活躍した幌馬車に使われた軽くて丈夫なホワイト･オークで、その内部を薪と油を入れて燃やし、３ミリの厚さまで焦がしたナンバー３のものを使う。これにより、バーボン特有の色と香りが付け加えられるのである。
バーボンの樽の条件は、常に新品のものを用いるということである。そして、バーボンで使われた樽は、解体されてスコットランドの蒸留所に送られてスコッチ･ウィスキーの熟成に一役買うのである。
　バーボン･ウィスキー造りは、トウモロコシ／ライ麦／バーレイ・モルトの３種類の穀類を煮ることから始められる。それを冷やして発酵桶に入れ、３〜４日後に発酵したら、コラム･スティルと呼ばれる蒸留塔で蒸留させる。これを内部を焦がしたホワイト･オークの樽で寝かせ、何年かの熟成期間の後、樽だしのウィスキーをそのまま壜詰めにする。
しかし、テネシー州で造られるジャック･ダニエルやジョージ･ディッケルなどのテネシー･ウィスキーは、この後、サトウカエデを燃やしたチャコールで濾過して雑物を取り除くのである。もっとも、連邦アルコール法の規制からいえばバーボンの一種ということになるのだが、蒸留者自らがバーボンとは違うという自信と誇りを持ってテネシー･ウィスキーと呼んでいる。
　バーボン･ウィスキーとテネシー･ウィスキーはその産地が異なるゆえに、別の名前の別の種類のウィスキーであり、それぞれにプライドを持つ、誇り高きアメリカン・ウィスキーなのである。

●アメリカン･ウィスキーの「ｅ」
　ウィスケ（hwiske）と発音されるウィスキーはアメリカの最も古い酒で、ライ・ウィスキーはウィスキーの中でも最も古く、ペンシルバニアとメリーランドでアイルランド系移民によって蒸留され始めた。そして、アメリカン･ウィスキーはスコッチなどの「whisky」ではなく、「whiskey」と「e」を入れて綴られるようになった（ただし、バーボンでもアーリー･タイムズやメーカーズ・マーク等は「whisky」と綴っている）。
これ以外で「e」を用いるウィスキーはアイリッシュ・ウィスキーである。

●バーボンの今
　最近のバーボン･ウィスキーは、新しくシングル・バレルという製品が注目を集めている。
これまでのバーボンは、スコッチ･ウィスキーでいうところのシングル・モルトが普通で、それをバーボンではストレート･バーボンと呼ぶ。ひとつのディスティラリーで、熟成の終わったいくつかの樽を開けてタンク内で混合して壜に詰める。シングル・バレルはそれよりもっと純粋さを追求したもので、熟成のすんだたったひとつの樽から壜に詰めるのである。ブラントンやブッカーズが有名である。
　特にブッカーズは、ジム・ビームの名誉マスター・ディスティラー、ブッカー・ノウが生み出したもので、彼はそれを「トゥルーリー・アンカット、アンフィルタード、ジャスト・ストレート・フロム・ザ・バレル（何も加えず、濾さず、ただ樽からの直接の一品を）」と誇る。しかし、彼はそれをストレートで飲むなという。わずかな水を加えると、このバーボンの中に封じ込められた芳香・風味が花開くからだと。